どうも皆さんkmです。
今回は毒物解説動画の第34回の記事版です。
かなり長くなったので2つに分けてます、こちらは水銀の概要です。
動画版はこちら↓
水銀とは
物理化学的性質
水銀は原子番号80番の金属元素です。
無臭銀色の流動性液状で、金属では唯一、常温で液体です。
水銀は自然界で様々な形をとって存在しています。
また、大きく分けて無機イオン型、金属、有機水銀に分類することが出来ます。
メチル水銀といえば水俣病を思い出される方もいらっしゃるかと思います。
それについては毒性編で詳しく解説するのでそちらをご覧ください。
また、水銀は空気にも水にもごく微量含まれています。
そのため、日常的に微量の水銀に曝されていることになりますね。
生体にも存在しており、人体には3~4㎎程度蓄積しているとされています。
水銀と人類の関わり
水銀と人類の関わりは有史以前までさかのぼります。
こちらは古代ローマのポンペイ遺跡のディオニュソス秘儀の壁画の画像です。
画像にあるこの赤い色は辰砂と呼ばれる硫化水銀からなる顔料が用いられています。
錬金術と水銀
錬金術とは、金や銀といった貴金属をその他の卑金属から生み出そうといった試みです。
当時の錬金術師たちはこの反応の触媒である
「賢者の石」は水銀なのではないか?とにらんでいたわけです。
賢者の石だと思われていた理由は以下の通りです。
- HgS(硫化水銀 赤)+ O2 → Hg(水銀 銀) + SO2
- 2Hg(水銀 銀) + O2 → 2HgO(酸化水銀 赤)
- 2HgO(酸化水銀 赤) → 2Hg(水銀 銀) + O2
水銀は温度によって硫化水銀(辰砂)、酸化水銀、水銀単体に変化するのですが、
酸化水銀と水銀単体は温度変化によって何度でも変化することが出来ます。
温度上昇によって外観は赤→銀へ変化し、温度が下がると銀→赤へ変化します。
この現象が興味深かったために賢者の石の候補として考えられていたのだと思います。
中国での水銀
また、唐代の中国では不老不死をもたらす薬「丹」を作り出す技術として「錬丹術」とも呼ばれます。
その中で水銀は死と再生を意味する物質であると考えられていました。
中国の錬金術師はそのような水銀を利用して不老不死の薬を様々開発し、
それを皇帝や有力者が服用するということが行われていました。
この時に作られた薬は水銀やその他多くの有毒物質を含むものであり、
数多くの中毒事故が発生しました。
記録によると、唐代の歴代皇帝22人のうち6人が
不老不死の薬によって死亡したということが示されています。
赤チンと水銀
赤チンをご存じでしょうか?
私を含め最近の若い方は使ったことのある方は少ないかと思います。
赤チンとはとある消毒液の通称です。
正式には「マーキュロクロム液」と言います。
名前の由来は、当時消毒によく用いられていたヨードチンキと
特徴的な赤色から赤いヨードチンキ、略して赤チンになったようです。
1939年に日本薬局方に収載されてしばらくはしみない消毒液として広く用いられていました。
赤チンの有効成分はメルブロミンと言われる物質で、構造は以下の通りです。
見てわかる通り、水銀が含まれています。詳しくは毒性の解説partで解説しますが、
有機水銀であっても、皮膚からはほとんど吸収されないため毒性は特に問題になりません。
この赤チンですが、2020年末に水俣条約により水銀製品の製造や販売などが禁止されたため、
もう市場で見ることは出来なくなってしまいました。
ちなみに、使用に関しては規制はされていませんので急いで捨てる必要があるわけではありません。
それでは今回はこれで以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。
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