水銀 毒性編

解説

どうも皆さんkmです。
今回は毒物解説動画の第34回の毒性部分の記事版です。
水銀そのものについては紹介編をご覧ください。
動画版はこちら↓

水銀は自然界で様々な形をとって存在しており、
大きく分けて無機イオン型、金属、有機水銀に分類することが出来ます。

3種の水銀の中で毒性が高いのは?
実は、先ほど紹介した3種類の水銀は吸収がかなり異なります。
単体の水銀については経口ではほとんど吸収されません。
無機水銀は消化管吸収は10%程度ですが、有機水銀はおよそ100%吸収されます。
よって、主に問題になるのは有機水銀ということになります。
その中でも今回は最も有名であろうメチル水銀について解説します。

メチル水銀とは?
メチル水銀は水銀にメチル基が結合した有機水銀の一種です。
自然界にも存在しており、食物連鎖によって濃縮されるため、
大型の動物には比較的高濃度で蓄積されていることがあります。
「妊娠している女性はマグロを食べすぎないように」
というお話を聞いたことがある方もいるんじゃないでしょうか。
この理由となるのがメチル水銀です。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/051102-2a.pdf
気になる方は参考資料のリンクを貼っておきますのでチェックしてみてください。

このような制限が必要な理由
メチル水銀が胎盤通過性が高いため、
多量の摂取によって胎児の発育に影響する可能性があるためです。
血液脳関門や胎盤を含むあらゆる組織を通過し、中枢神経系に対して毒性を引き起こします。
さらに、非常に安定性が高く半減期が70日と非常に長いため、
蓄積しやすく毒性を発揮しやすいためです。。

なぜメチル水銀は有毒?

メチル水銀のLD50
LD50そのものについては別に記事があるのでそちらをご覧ください。

LD50 ラット(経口摂取)40mg/kg体重
これは薬事法に「毒薬」と「劇薬」の区分があるのですが、
毒薬が30mg/kg体重以下のカテゴリーになりますので、それに近いレベルです。

チル水銀の作用機序
水銀イオンはタンパク質のSH基と結合し、変性、失活させる
最初にイメージだけお伝えすると、
生命は様々なタンパク質が協力して維持されているわけですが、
それに対して害をなすため毒になるというわけです。

作用機序解説
そもそもSH基についてですが、これはアミノ酸のシステインに由来するものです。

こちらがシステインです。

このシステインとメチル水銀がこのように結合するわけです。

メチル水銀が結合することによって何が起こるのか?
システインはSH基を利用してタンパク質の立体構造の維持や
SH基の酸化還元反応を生かして代謝に関与したりという機能を持っています。
水銀によってこれらの機能が阻害されるわけですから、
タンパク質の構造が破壊される、または代謝を行う能力を喪失するわけです。
これらの作用によって細胞の生存に必要な機能が障害されるため、水銀は毒性を持つというわけです。

メチル水銀は避けるべき?
ここまでの解説で「メチル水銀は摂取してはならない」
と思われる方もいらっしゃると思いますので、次はこれについて触れていきます。

平均的な日本人は水銀をどの程度摂取しているのか?
厚生科学研究によれば、日本人の平均的な総水銀摂取量は
1日当たりおよそ7~10µgといわれています。
これが多いのか少ないのかというところですが、
WHOの発表しているメチル水銀の暫定耐容週間摂取量は1.6µg/kg 体重/週としています。
これだと少々分かりにくいので、60kgの人で計算すると、毎日13.7µg程度になります。
日本人の平均は7~10程度だったことを考えると、
通常の食生活をしているのであれば問題にならない程度であるということが分かります。
実際我々の生活で水銀中毒があまり身近でないということからも、
現在の平均的な摂取量では大きな問題は起こらないということは理解できるかと思います。
もちろん積極的に摂取する理由はありませんが、
通常の生活であれば意識して減量するようなレベルではありません。

それでは今回は以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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