シガトキシン解説

解説

どうも皆さん、kmです。
今回は過去に作成したシガトキシン解説動画リメイク動画の記事版です。
動画版はこちら↓

シガトキシンとは
皆さんはシガテラはご存じでしょうか?
シガテラとは、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁の周辺に生息する魚によって起こる食中毒の総称です。
その食中毒の原因物質は様々あるのですが、シガトキシンはそのうちの一つです。
日本国内では沖縄でよく発生するので、
沖縄県民はよくよくご存じなんじゃないかと思います。
釣りをよくする方は1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
沖縄県のパンフレットです、シガテラについてよくまとまっています。
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/kagaku/documents/shigaterapannfu.pdf


さて、そんなシガトキシンについていろいろ見ていきましょう。
まずは原因物質を紹介します。

こちらがシガトキシンです。R1,R2は類縁体によってさまざま構造が異なりますが、
この辺は細かくなりすぎるために省略します。
ちなみに、毒力はそれぞれ異なり、10倍程度違います。
(どのLD50も非常に小さいので大きな差はありません)
さて、先ほど魚によって発生する食中毒という話をしましたが、
実は魚がこの毒を作っているというわけではありません。
同種の魚でもシガテラに当たったり当たらなかったりする場合があるのはそのためです。
また、シガテラによって毒化した魚かどうかは見た目で判断することは不可能です。

魚の毒化メカニズム

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E6%BF%83%E7%B8%AE

シガトキシンは食物連鎖によって生物濃縮を受けることで魚へ蓄積していきます。
これは生物濃縮を簡単に示した図です。赤い点がシガトキシンだと思ってください。
見方は通常の生体ピラミッドのように、下が植物などの生産者、
上に行くほど強い消費者といった形になります。
シガトキシンの生産者は「渦鞭毛藻」です。
渦鞭毛藻はシガトキシンを生産し、体内に蓄積させているわけですが、
これを捕食した生物はついでにシガトキシンを体内に取り込むことになります。
それを繰り返しているうちに、より強い生物ほど多くのシガトキシンが蓄積する
ということが起こります。
そのため、個体によっては大量に蓄積させていたり、
ほとんど持っていなかったりと差が出るわけです。

シガトキシンの毒性
それでは、シガトキシンのLD50を見ていきましょう。
LD50については別記事を参照してください。

マウス(腹腔内投与)0.35 μg/kg

これを見てもらえばわかる通り、非常に強烈な毒性を持っています。
このまま人にあてはめることは感受性の問題などあるので適切ではないですが、
体重を乗じることでご自身のLD50っぽい値を計算することも出来ます。
70kgのヒトで24.5µgですね。指先一つまみがだいたい500µgらしいので、
それの10分の1以下という量ということです。
いかにシガトキシンが強力かわかります。

シガトキシンの作用機序
シガトキシンの作用機序は、
「電位依存性ナトリウムチャネルへ結合し、チャネルを活性化する」
となります。
テトロドトキシンの作用機序をご存じの方はピンとくるかもしれません。ちょうど逆になっています。

神経伝達の目的は脳から送られてくる指令を電気信号に変換し、
それを各組織に伝えて指示通り動かすことです。
神経細胞は脳などから送られてくる信号を銅線のように伝える働きを持っています。

神経伝達の仕組み

https://www.kango-roo.com/learning/2107/

神経細胞では図のように神経伝達が行われています
中枢や他の神経細胞から受け取った信号を電気信号へ変換し、
次の細胞や組織へ信号を伝達します。
その電気信号の伝達の方法にイオンが関わっています。

https://www.kango-roo.com/learning/2078/

上の図は活動電位の発生と時間経過を示したものです。
①はまだ信号が到達していない状態です。
この時、細胞内は-に、細胞外は+の電位を保っています。
②細胞に刺激が加わると、イオンの移動が発生し細胞内外の電位差が逆転します。
これによって細胞内のイオンの移動が起こった周辺が+、細胞外が-の電位になります。
③細胞内の一部が+となった際に、その付近にある電位依存性Naチャネルが開口します。
その結果、細胞内外のNaの濃度差によって細胞内にNa+が流入し、
Naチャネル周辺が+になります。
④細胞に電位差が発生しているため、+から-へ電流が流れます。
それによって付近のNaチャネルが開口し、③と同様にNaチャネル周辺の電位が+になります。
また、ある一定の電位まで上昇すると自然とNaチャネルは閉じます。
⑤Naチャネルが閉口した後、電位依存性Kチャネルが開口し、
細胞内に多く存在するKはそこから細胞外に流出します。
その結果、細胞内の電位は元に戻ります。
⑤の状態では電位は戻っていますが、細胞内のイオン濃度が静止状態と異なるので、これを戻す機構は別に存在しています。
上のようにして神経伝達が行われているわけです。

シガトキシンはどこに作用する?
シガトキシンの作用は電位依存性Naチャネルの活性化です。
電位依存性Naチャネルは神経伝達の③、④でイオンの移動に関わっています。
シガトキシンはそれ開きっぱなしにして機能を阻害します。
要は神経伝達そのものを阻害するわけです。
当然特定の神経伝達を阻害するわけではないので、
全身の様々な部分へ影響が出ます。
症状としては消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛、下痢)や
感覚異常(ドライアイスセンセーション)、めまいや脱力感など非常に多彩な症状が発現する可能性があります。

それでは今回はここまでです。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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