どうもkmです。YouTubeで衝撃的なコメントをいただいたので、
これについて解説したいと思います。
頂いたコメントはこちら↓
もちろん私もドン引きしました。いやさすがに50錠はもう…。
どう考えてもダメそうな感じしかしませんが、面白そうだったのでやっていきます。
動画版はこちら↓
ブロチゾラムとは?
ブロチゾラムはベンゾジアゼピン系の薬の一つです。
よく睡眠導入剤として使用される薬です。
今回は作用については割愛します。
効果のほどは飲んだことがないのでわかりませんが、
話を聞く限り、不眠症でない人が飲んだら起きていられないくらいの効果はあると思います。
ブロチゾラムの用法・用量
通常一般的な成人では、睡眠導入剤として使用する場合は、就寝前1錠服用です。
適宜増減が可能なので、2錠服用でという方もたまにいるかと思います。
今回頂いたコメントでは50錠ほど服用したという話なので、
常用量の軽く十倍は服用していることになりますね。
もう駄目そうな雰囲気が漂っています…。
ブロチゾラムのLD50
LD50は急性毒性の指標になる数値のことです。
小さければ小さいほど強い急性毒性を有しているということになります。
詳しくは別記事を参照してください↓
それでは、ブロチゾラムのLD50ですが、
マウス(経口投与) 10,000 mg/kg体重以上
ラット(経口投与) 7,000 mg/kg体重以上
のようです。予想外にものすごく高かったです。
珍しく「以上」とついていますが、
実験で想定していた量では「半分死亡した」
という結果が得られなかったためこうなったようです。
実際に使用する用量とLD50がかなり解離しているということは、
大量服用によっても悲惨な結果になりにくいので、安全性は相当高いと言えるでしょう。
動物実験で得られた結果をこのまま人間にあてはめることは出来ませんが、
試しヒトでのLD50を10,000 mg/kg体重として計算してみましょう。
体重を60kgとすると、ヒトでの経口LD50は600000mgとなるので、
0.25mg錠で600000mg摂取するためには、2400000錠の服用が必要になります。
このため、50錠ではLD50には遠く及ばないと考えられるため、
命に別状はなさそうです。かなり意外な結果になりました。
何も起こらなさそうでよかったです。
50錠服用するとどういった症状が考えられるのか?
「ブロチゾラムを大量に服用した」という症例が見つからなかったので、
考察という形でやりたいと思います。
まず50錠服用した場合の服用量ですが、
ブロチゾラムで12.5mgの服用になります。
そして、大量に摂取した成分がすべて吸収されるのか?ですが、
とインタビューフォーム(IF)に記載があります。
用量の増加とともに血中濃度がある程度頭打ちになるという結果が得られています。
ここで少々血中濃度について簡単にお話しします。
血中濃度は入ってくる速度と出ていく速度のバランスで変動します。
入ってくる速度が優勢であれば血中濃度は上昇し、
出ていく速度が上回っている場合は低下していきます。
今回のブロチゾラムの結果では、用量が上昇しても
血中濃度がある程度以上は上がらないという結果です。
これは恐らく、入ってくる速度が用量の増加に比例して上昇するというわけではなく、
ある程度以上は非常に上昇しにくくなるためと考えられます。
そのため、すべて一気に吸収されているというわけではなく、
吸収速度には天井があり、一気に吸収されるというわけではなさそうです。
代謝・排泄について
ブロチゾラムは腎臓と肝臓から排泄されるようです。
吸収量が頭打ちになるのであれば、吸収が排泄を大幅に上回った結果、
超高濃度になるということは考えにくそうです。
さらに、動物実験レベルではありますが、
LD50の実験時にブロチゾラムの大量投与が原因である
と考えられる病変も見つかっていないようなので、
今回の大量服用により組織が障害される可能性は低いのではないかと思われます。
というわけで、50錠服用したとしても、思ったより大きな問題はなさそうです。
しかし、薬の用法用量は臨床試験を重ねて最適なものが選択されています。
今回大きな問題が見つからなかったからと言って
用法を無視してテキトーに服用してもいい、
ということにはなりませんので、
しっかり用法用量を守ってお薬は使いましょう。
治療について
ここについては正直よくわからなかったので、とりあえず調べた内容を書いておきます。
何かわかる方、よかったら教えてください。
腸内に大量の錠剤が残っていると、そこから持続的に吸収がされることで
肝臓の代謝が間に合わなくなり血中濃度が高い状態になってしまう
ということもあるようです。
そのため服用から時間が経っていない場合、
胃洗浄が行われる場合もあるようです。
しかし、この情報が載っていた報告は多剤大量服用だったので、
ブロチゾラムだけの場合はまた違った結果になるのではないかと思います。
さらに、薬物の吸収を抑えるために、
それを吸着する作用を持つ活性炭が使われることがあるようです。
それに加えて、物質が体内に滞留する時間を短くするために
下剤が使用される場合もあるようです。
また、ベンゾジアゼピン系の薬には中和剤が存在します。
今回は作用について解説はしていないので詳しくは省きますが、
「フルマゼニル」と呼ばれる作用拮抗剤があります。
ただ、中毒学会のサイトによると治療における役割が確立されていないようですので、
よっぽど重篤な状態でなければ使うことはなさそうです。
今回は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
参考文献
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_doubutu_brotizolam200124.pdf
http://jsct-web.umin.jp/shiryou/archive2/no10/
https://www.bij-kusuri.jp/products/attach/pdf/len_t0_25_if.pdf
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