神経の情報伝導メカニズム

神経細胞の電位

神経細胞の中を情報が伝わっていく「伝導」は、細胞内外で高速でイオンのやり取りをすることで行われています。神経細胞は細胞なので、「脂質二重膜」で区切られています。通常、この膜を通してイオンは移動出来ないようになっています。細胞は外とイオンのやり取りをする「イオンチャネル」という構造体が細胞膜に存在していて、基本的にイオンが移動する時にはこのチャネルを介してやり取りすることになっています。そして、細胞内外のイオン濃度は厳密に定められています。

電位とは、基準点からのエネルギーの高さのことを示すものですが、ここでは「陽イオンがたくさんあればあるほど高い」と思っていただければ十分です。

神経細胞の電位は、何も刺激が来ていない静止時は細胞内の電位はマイナスに、細胞外の電位はプラスに保たれています。この状態を「分極」と言います。

活動電位の発生と伝達

それでは活動電位の発生と、その電位がどのようにして伝わっていくのかを考えていきます。図の左側は細胞の電位が時間経過でどのように変異するかを示したもので、右側は電位の移動のメカニズムを示したものです。

どこかで信号が生まれて、この神経細胞に伝わってきたところを考えます。

まず、①のように神経細胞の膜に刺激が加わると、細胞膜のイオン透過性が変化してイオンの移動が起こるようになります。②では取り込まれた陽イオンが細胞内に拡散し、周囲の電位が上昇したところです。続いて、③で細胞内に発生した膜電位に反応し、電位依存性Naチャネルが開口します。それによって、細胞外に存在する大量のNa+が細胞内に流入し、その周囲の電位が細胞外のそれを超えて大きくプラスに傾きます。これによって分極している状態が解除されるため、脱分極と呼びます。そして、この時発生している電位のことを「活動電位」と言います。ちなみに、電位依存性Naチャネルが開口している時間はわずかで、およそ1ミリ秒程度であると言われています。

そして、④と⑤はほぼ同時に発生しています。④では③で流入したNa+が周囲に拡散し、それによって周囲の電位が上昇します。⑤では、十分電位が上昇すると電位依存性Naチャネルは閉じ、それとほぼ同じタイミングで電位依存性Kチャネルが開きます。電位依存性Kチャネルが開くとそこからK+が流出し、細胞内の活動電位はもとの静止電位まで戻っていくこととなります。

④で発生したイオンの流れは周囲の電位を上昇させ、それによって隣の電位依存性Naチャネルが開口し、情報がどんどん伝わっていくことになります。

まとめると、伝導による情報伝達はイオンのやり取りが非常に重要ということになります。

ここで、④で周囲の電位が上昇した時に、進行方向と逆の電位依存性Naが活性化し、信号が逆に伝わっていくことはないのか?という疑問が発生すると思います。しかし、実際にはそういう事は起こりません。電位依存性Naチャネルは活性化した後、しばらくは活性化しない性質を持っているためです。

それでは、今回の解説は以上です。

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