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ガラガラヘビと毒
ガラガラヘビは、有鱗目・クサリヘビ科・マムシ亜科・ガラガラヘビ属に属するヘビの総称です。特に、北米から南アメリカにかけて広く分布しており、約30種類が存在しています。ガラガラヘビは大型で、体長は通常1.5メートルに達し、最大で1.9メートルに成長することもあります。
ガラガラヘビの「ガラガラ」は、赤ちゃんをあやすガラガラのように見えることからつけられています。彼らは身の危険を感じると、尾を激しく振って音を出し、敵に警告します。この音は、中が空洞になった硬い節が緩くつながっている構造をした尾の先端にある発音器官で生じます。
ヘビ毒はタンパク質の複雑な混合物であり、酵素と毒素の2つのグループに分類できます。酵素は、一般に分子量が高いタンパク質です。ほとんどの場合、これらは血液凝固に作用し、活性化を補い、細胞溶解と代謝の活性化を引き起こします。クサリヘビ科の毒には酵素が特に豊富に含まれています。
そして、ガラガラヘビの持つ毒は非常に強力です。一般的にガラガラヘビは出血性の毒を持っていることが多いですが、中には神経毒を主成分とする種もいます。今回は、神経毒として機能する「クロトキシン」に注目して解説していきます。
クロトキシンとは?
クロトキシンは、南アメリカガラガラヘビ(Crotalus durissus terrificus)が産生する毒素のことです。
クロトキシンは異なる2つのサブユニットから成るヘテロ二量体です。それぞれのサブユニットは、「酸性のCAサブユニット」と、「塩基性のCBサブユニット」からなります。これら2つのサブユニットが結合して、クロトキシン複合体を形成します。以下、それぞれのサブユニットの役割について簡単に解説します。
CAサブユニット
CAサブユニットはCBサブユニットの毒性を増強する働きを持っています。CAサブユニットは、CBサブユニットの非特異的な結合を防ぐ役割を果たし、毒性のメカニズムに重要な役割を持っています。
CBサブユニット
CBサブユニットはホスホリパーゼA2活性を持つ部位です。毒性を持っているのはこのサブユニットです。ホスホリパーゼA2活性と神経麻痺の関連・メカニズムは今のところはっきりしていません。
クロトキシンの複合体とアイソフォーム
CAサブユニットとCBサブユニットは異なるアイソフォームを持つことがあり、それによって少なくとも16種類の複合体を形成すると言われています。アイソフォームの違いは、形成する複合体の安定性に影響を与えると言われています。毒性の低い複合体は安定性が低く、毒性の高い複合体は安定性が高いことが示唆されています。安定性が高いとより体内に残って活動することが出来るので、より長く毒性を発揮するため危険性が高くなります。
クロトキシンのLD50
LD50の数値はかなり小さく、クロトキシンは強力な急性毒性を持っていることが分かります。ガラガラヘビが獲物を獲得するために持っている毒であることを考えると妥当な数値なのかもしれません。
クロトキシンの中毒症状
局所的な痛み、腫れ、浮腫、皮膚の変色、斑状出血、重度の局所炎症、壊死、重度の出血症候群を引き起こす場合があるようです。
クロトキシンの作用機序
過去に解説したことのある機序に近い毒物なので、機序を見て何となく作用メカニズムが想像できる方もいるかもしれません。
以下、作用機序の解説をしていきます。最初に、クロトキシンの作用機序は不明な点も多いためわかる範囲で解説を行います。今回は「神経伝達と神経伝達物質」、「筋肉の収縮メカニズム」の内容を含みます。必要に応じて記事を参考にしてください。
神経終末に対する作用
クロトキシンのCBサブユニットは「神経終末からのアセチルコリンの放出を妨げる作用」を持っています。これによって神経伝達物質の放出が妨害されるため、筋肉へ適切な刺激が伝わりにくくなります。
クロトキシンはアセチルコリン受容体に作用することでアセチルコリン受容体の機能を損ないます。アセチルコリン受容体はアセチルコリンが結合すると活性化し、筋肉に収縮するように信号を伝えます。しかし、アセチルコリン受容体にクロトキシンが作用すると、その活性化を抑制し、不活性状態を持続にさせることで信号の伝達を遮断してしまいます。
これら二つの機序が同時に作用することで筋肉へ信号が届きにくくなり、筋肉の収縮が妨害されてしまいます。特に、呼吸器系の筋肉に症状が発生すると呼吸が停止するため非常に危険です。
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