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ビタミンAとは?
実はビタミンAは総称で、それに該当する物質はかなりの数あります。レチノール、レチナールが代表的です。また、野菜に含まれる赤色や黄色といった色素がビタミンAの前駆体(プロビタミンA)です。
有名どころはニンジンに含まれる「β-カロテン」が挙げられます。プロビタミンAはなんと50種類以上存在していることが分かっています。それぞれ小腸でビタミンAに変換されますが、モノによってビタミンAへの変換効率が異なります。
日本では一般的に相当偏った食生活を長期間続けない限り不足する可能性はかなり低いと言われています。発展途上国ではビタミンA不足により多くの子どもが失明していると言われています。
ビタミンAを多く含むのは動物性食品で、特に肝臓と卵に多いとされています。また、プロビタミンAは色の濃い野菜や果物に多く含まれている傾向があります。
ビタミンAの機能
目の正常な機能の維持、皮膚や粘膜の機能維持、成長と分化に関与しているとされています。
ビタミンAの逸話
「ニンジンで視力を強化して戦闘機を打ち落とす話」 これは第二次世界大戦ごろのイギリス空軍の話です。第二次世界大戦中、イギリス空軍は新しいレーダーの開発に成功し、そのレーダーを活用した結果、突然戦果が増えたようです。 それは非常にいいことでしたが、このままではそのうち敵国に新しいレーダーの存在がバレて対策されてしまうため、何とかしてレーダーの存在を隠したかったわけです。 そこでイギリスの取った策は、「ニンジンを大量に摂取して夜目を効かせることで夜間に敵機を捕捉出来た」という情報を流すことです。当時でもビタミンAが視力に関係しているということは知られていたようで、これを利用したわけです。 実際のところ、ビタミンAをたくさん取ったところで夜間視力を強化できるわけではありません。不足すると確かに夜目が効かなくなりますが、過剰に取ったとしても強化はされません。 そしてこの話がイギリス国民に伝わると、みんなこぞってニンジンを食べたらしいです。
北極探検隊とビタミンAの話 北極探検隊は食料が不足したため、そこら辺にいたホッキョクグマを狩ってその肝臓を使ってシチューを作ったようです。その後、探検隊は頭痛、吐き気、皮膚の剥離といった症状に苦しめられ、 最終的に亡くなるものもあらわれたようです。現在、この原因はビタミンAであると考えられています。 この事例のように、ビタミンAは過剰に摂取すると過剰症が発生してしまいます。 ちなみに、ホッキョクグマの肝臓に含まれるビタミンAの量は、ヒトと比較して20~100倍程度と言われているようです。ホッキョクグマの肝臓を食べるとなにかしらの中毒症状が起こる、と知っている現地民は決して口にしないというくらいには危険なものと認識されているようです。 他にも、アザラシやイシナギという魚の肝臓にも大量のビタミンAが蓄積しているから摂取しないようにお気を付けください。
日本人のビタミンA摂取量
2019年の国民健康・栄養調査によると、男性が平均552µgRAE/日、女性が518µgRAE/日摂取しているようです。
RAEはレチノール活性当量(retinol activity equivalents)で、プロビタミンAのようなビタミンAに似た作用を持っている物質はビタミンと比べるとその活性が低いので、それぞれをレチノールに換算してビタミンAとしてどのくらい摂取しているのか?を示したものです。要は数値が大きいほどビタミンAをたくさん取っているということです。
ビタミンAの耐容上限量
ビタミンAには過剰症があることが分かっているので、「耐容上限量」が定められています。
耐容上限量とは、「特定の条件を満たす人々のほとんどが過剰摂取による健康被害を起こさないと考えられる習慣的摂取量の上限」のことです。これを超えなければ過剰症は起こさないだろう、という数値となります。成人男女ともに2700µgRE/日に設定されています。
通常の食生活では平均値位になるかと思うので、通常の食生活で習慣的に耐容上限量を摂取することは実質不可能かと思います。逆に、偏った食生活では慢性的に超える可能性があるので注意が必要です。
また、動物のレバーには100gあたり13000µgREほどビタミンAが含まれていてかなり多く含まれています。1回食べたくらいで過剰症になるとかそういう事はありませんが、頻繁に習慣的に摂取している場合は注意が必要です。特にサプリメントを服用している方は、過剰にならないように注意が必要です。
ビタミンAの推定平均必要量
推定平均必要量とは、特定の集団に属する人の50%が必要量を満たしていると推定される摂取量のことです。推定平均必要量はビタミンAの対外排泄量を元に、それを補完するためにどれだけビタミンAを摂取する必要があるかを計算して、それを参考にして算出されています。
推定平均必要量は概算で成人男性550~650µgRAE/日、成人女性で450~500RAE/日とされているので、日本人の平均摂取量からするとはそんなに問題ない量であると考えられます。
ビタミンAの推奨量
推奨量とは、当該集団に属するほとんどの者(97〜98%)が充足している量と定義されています。推奨量は成人男性で年齢にもよりますが800~900µgRE/日、女性は650~700µgRE/日程度とされています。また、妊娠中・授乳中だと推奨量が増えるため、それは個別に対応する必要があります。
平均摂取量と比べると、残念ながら男女ともに推奨量は満たせていないことが分かります。しかし、推奨量は97~98%程度の人が1日の必要量を満たすとされている量のことなので、「これを超えてないとそのうち病気になります」というものではありません。
ちなみに、推奨量は推定平均必要量に個人間の変動係数を20%として、推奨量算定係数をかけて算出されたものです。
ビタミンAのLD50
レチノール単体のLD50は見つけられなかったので、「レチノールパルミチン酸エステル」のLD50を見ていきます。
マウス(経口)6060 mg / kg・体重 ラット(経口)7910 mg / kg・体重
量的には多いものではないことが分かります。
ビタミンAの過剰症
ビタミンAは脂溶性のため、摂取しすぎると体内に蓄積されるため過剰症を引き起こす可能性があります。過剰症の報告は基本的にサプリメントやレバーの大量摂取によるため、通常の食生活を送っているのであれば過剰症は起こらないと考えられます。
短期的な影響は主に乳幼児で多く見られる傾向があります。これは特に後遺症はないとされています。
長期的(数か月程度)には、肝臓や中枢神経系に影響が出たり、骨や皮膚の異常が見られます。特に小さい子どもでは骨格異常や頭部の異常が出る場合もあるので注意が必要です。また、胎児の奇形を引き起こす原因にもなるので、妊娠中、もしくは妊娠を希望される方は十分注意が必要です。この場合は自己判断せずに主治医に相談することをお勧めします。
プロビタミンAの過剰摂取は問題ない?
一般的にプロビタミンAの過剰症は「柑皮症」を除いて存在しないとされています。柑皮症は指先が黄色くなるもので、摂取を中止すれば自然と治るので、特に治療はされないようです。
過剰に服用したとしても過剰症を発症しない理由は、体内でビタミンAが不足すると、必要な分だけプロビタミンAが変換されて、不要な分は体内の脂肪組織に蓄えられているか、そのまま排泄されるからとされています。そのため、過剰症を恐れてプロビタミンAの摂取を避ける必要はありません。
ただし、サプリメントからプロビタミンAを大量に摂取した場合は有害作用が報告されています。そのため、通常の摂取であれば問題にはなりませんが、それを目的に大量に摂取することは問題となるようです。結局のところどんな物質も量によって薬にも毒にもなるということですね。
ビタミンAの欠乏症
最も大きな問題になるのは視力障害です。放置していると角膜が乾燥し、眼球乾燥症を引き起こすことがあります。角膜が乾燥すると劣化してしまい、最後には失明することになります。
夜盲症(鳥目)の原因になる場合があります。
目の網膜に存在する「ロドプシン」は「オプシン」と呼ばれるタンパク質と「レチナール」から出来ています。光を受けると、レチナールがオプシンから遊離し、その刺激が視神経から脳に伝わることで光を感知しています。
ビタミンAが不足すると、ロドプシンが減少するため、光を感知する能力が落ちるというわけです。
他には免疫機能が正常に機能しないために、感染症にかかりやすくなったり、皮膚が角質化し分厚く・硬くなる、小児の場合は成長や発達に遅れがみられる場合もあります。
それでは今回は以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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