二日酔いキノコ「ヒトヨタケ」の話

解説

どうも皆さん、kmです。
今回は毒物解説です。ヒトヨタケについて解説していきたいと思います。

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ヒトヨタケとは

https://kinoco-zukan.net/hitoyotake.php

ヒトヨタケは春から秋にかけて庭など身近な環境に発生するキノコです。
名前の由来は一晩で傘が黒く溶けてしまうためその名前が付いています。

傘は一晩で溶けるようですが、柄はそのまま残るようです。
溶ける寸前のヒトヨタケは非常においしいと言われていますが、
「摂食した後アルコール類を飲んだ場合中毒症状が発現する」
ということが知られています。

ヒトヨタケ中毒事例

平成元年(1989)6月4日,男性が柄の長さ1.5cmのヒトヨタケを30本,豚肉とキャベツ,人参,長ネギを入れ油妙めにして全て摂食。 7時頃ビールを飲んだ。コップ2杯目を飲んでいるうちに,急に頭痛,吐き気がした。ただし嘔吐はなかった。翌日の夜,昨晩のこともあるので酒2合をゆっくり飲んでいたが, そのうち頭痛が起こり,眠くなり翌朝10時に目が覚めた。摂食3日後,夕食時, はじめの日ほどではないが軽い頭痛と吐き気を再び催したが4日後は消失した。

神奈川キノコの会: くさびら、神奈川キノコの会会報12号, 1990より引用

この事例では、ヒトヨタケを炒め物にして、ビールを飲み、その後頭痛、吐き気を催しています。
この中毒事例はどのようにして起こったのか、今回はそれについてお話します。

ヒトヨタケの毒成分

ヒトヨタケに含まれる毒成分は「コプリン」で、以下構造です。

実際にはコプリンが代謝されて生成する1-アミノシクロプロパノール
作用することで中毒症状が発現します。

作用機序

それでは1-アミノシクロプロパノールの作用機序を見ていきましょう。
1-アミノシクロプロパノールの作用機序は、

「アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害し血中アセトアルデヒド濃度を上昇させる」

となっています。
アルデヒドデヒドロゲナーゼとはアルコール代謝に関わる酵素であるので、
まずはアルコールの吸収と代謝についてみていきましょう。

アルコールの吸収と代謝

アルコールは口から摂取した場合90パーセント程度吸収されます。
そして、そのうちの95%程度は肝臓で代謝されます。

これがアルコールの代謝の図です。
アルコールに含まれるエタノールは、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によってアセトアルデヒドへ、アセトアルデヒドはアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によって酢酸へ代謝されます。
このようにしてエタノールは代謝されることで無毒化され、最終的には尿として体外に排出されます。

アルデヒドデヒドロゲナーゼが阻害された場合どうなるか

アルデヒドデヒドロゲナーゼはアセトアルデヒドを代謝する酵素なので、その反応が阻害された結果、アセトアルデヒドが蓄積することになります。
それではアセトアルデヒドが蓄積するとどうなるかの詳細は解明されていませんが、頭痛や吐き気、上半身や顔面の紅潮などを引き起こします。どうやら、アセトアルデヒドが作用することでヒスタミンの遊離促進や間接的な作用が疑われているようです。

また、アセトアルデヒドは発がん性などが報告されていたりもしますが、今回のような短時間の暴露では検討できないため、今回はスルーします。

それでは今回は以上になります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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