一気食いが死因になる「リフィーディング症候群」

解説

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リフィーディング症候群とは、慢性的な栄養不足(1週間以上)が続いている状態で栄養補給を行うことで、発生する代謝異常のことです。つづりは「refeeding」で、re(再び)feeding(摂食)という意味となります。

日本軍が捕虜にしていたアメリカ兵に食事を与えたときに様々な症状が出た報告が最初とされています。しかし、日本でははるか昔からそれに関する記録が残っているようです。

秀吉による鳥取城の兵糧攻め

1580年、鳥取城を落とすために豊臣秀吉(羽柴秀吉)が取った戦術が兵糧攻めであると言われています。4か月に及ぶ兵糧攻めによって極度の飢餓状態に陥り、鳥取城は開城されました。その後、飢えた兵士に秀吉が食事を用意したのですが、それを夢中になって食べた兵士のほとんどが死んでしまったと記録されています。

これが「リフィーディング症候群」であると考えられます。

その後、秀吉は「急にたくさん食べると死んでしまう」ということを認識し、一度に食べないようにと指示を出すようになったようです。

リフィーディング症候群のメカニズム

ざっくりいうと、飢餓が続き、その環境に適応した体に、急に栄養を与えると体内で様々な反応が突然発生するため、それに適応することが出来ずに様々な症状が発生するというものです。

飢餓に対応した状態

飢餓状態になると当然食事からエネルギーを獲得することが出来ないため、エネルギーの中心は糖ではなく、脂肪や体内のタンパク質を分解を中心としたものに変わっていきます。そして、血糖値の維持は生命活動において非常に重要なことであるので、何とかして血糖値を維持するためにホルモンなどが作用し、血糖値を維持するように働きます。

そのため、血糖値を下げる働きを持つインスリンの分泌が低下し、血糖値を上昇させる働きを持つグルカゴンが有意に作用する状態となります。他には、カテコールアミン副腎皮質ホルモンなどのホルモンも作用し、血糖値を維持するように働くようになります。

肝臓に蓄えられているグリコーゲンは早期に枯渇し、糖を消費する解糖系と脂肪新生は停止した状態になります。そして、血糖値を維持するために「糖新生」が肝臓と腎臓で行われるようになります。糖新生の材料は体のタンパク質由来のアミノ酸で、骨格筋を分解して作られています。また、脳は次第にケトン体を利用するようになりますが、しばらくは糖を利用することになります。

急激に栄養を摂取すると?

ここで急激に栄養を与えられると、飢餓状態ではグルカゴン優位でしたが、急に栄養が多く入ってきたことで、突然インスリン優位に切り替わってしまうわけです。

急に大量に入ってきたグルコースは、一気に細胞内に取り込まれ、それらはグリコーゲン合成の原料となります。グリコーゲンが十分にできると、脂肪新生によって糖は脂肪に変換されていきます。

また、インスリンの影響で体のタンパク質合成が亢進します。これらによってリンカリウムマグネシウムなどの電解質が細胞外液から細胞内液へと急激かつ大量に移動し、体内の電解質濃度が急激に変動してしまうわけです。

特に、この3種の電解質の欠乏が深刻であると言われています。

それでは、それぞれの電解質が不足するとどうなるのか?について簡単に解説します。

リン不足で何が起こる?

リンはエネルギー代謝や細胞内の信号伝達、DNAやRNAの原料など様々な働きを持っています。リンが少ないことで表れる症状としては、筋力低下、不整脈、食欲不振等が挙げられます。

マグネシウム不足で何が起こる?

マグネシウムは酵素反応の触媒や、細胞膜の安定作用を持っていると言われています。これが不足すると、筋力低下、不整脈などが発生します。

カリウム不足で何が起こる?

カリウムは神経や筋肉が正常な働きを実現するために厳密に濃度が決められているミネラルです。極度に低下すると、心停止、呼吸不全などが発生します。

リフィーディング症候群はこれらの電解質が一気に不足することによって発生しているため、死因は特定することは出来ません。

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