エタノールの急性毒性

解説

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エタノールとは?

エタノールはいわゆる「お酒」に含まれる世界一摂取されている薬物です。
社会に甚大な損失を与えていることが既に認識されており、アルコールの飲み過ぎによる社会的損失が4兆円になると試算された例もあります。当然どの薬物よりも社会に大きな影響を与えているため、注意が必要な薬物です。
その一方、注意が必要な薬物の割には合法的に製造されており、一般的な手段で入手可能です。他には消毒や溶媒として用いられている場合もあり、用途も非常に多彩です。

ここまでエタノールの負の側面ばかり強調しましたが、適量であれば、リラックスさせる、ストレス発散、血行改善、食欲増進等他の作用もあります。

エタノールと人類のかかわり

エタノールを含む飲み物は1万年以上昔から存在すると言われています。
蜂の巣にたまったハチミツが雨水に溶け、それが発酵することで出来た蜂蜜酒を飲んだことが始まりであるとか、放置してあった麦粥に酵母が混入し、それが自然に発酵したことが起源であるとも言われていますが、詳細ははっきりしていません。
蒸留の技術も早くから発展し、中世ではエタノールの純度を上げて医薬品として用いていたようです。産業革命期になると、溶媒や原料としての需要が爆発し、エタノールの製造が最初の化学工業として発展しました。

それから現在に至るまで、嗜好品としても、化学原料としても非常に身近な存在としてエタノールは存在しています。

エタノールのLD50

LD50については別記事をご覧ください。
ものすごく簡単に解説すると少ないほど毒性が高い物質です。

エタノールのLD50
ラット(経口)7000~11000 mg/kg

LD50としては特に規制されるような数値ではありません。

一般的な量としては、成人では1mL/kg体重で軽症から中等症レベルの中毒が、
小児では、0.5mL/kg体重で重篤な中毒症状が発生すると考えられています。

ただし、エタノールの代謝能は個人差が非常に大きいため、一概に中毒量を出すことは出来ないので、上記の量はあくまでも目安です。

急性アルコール中毒の症状

体内のエタノール濃度によって症状は様々です。
特に小児はアルコールに対する感受性が高いため、血糖値に影響しやすく、けいれんが発生しやすいため注意が必要です。そもそも小児はアルコール禁止なので基本的にそんなことは起こらないと思いますが、ジュースや水と誤認して飲んでしまう事例がそれなりにあるので、手の届くところにはおかないことをお勧めします。

急性アルコール中毒は、血中エタノール濃度が急上昇し、中枢神経機能を抑制することによって発生しています。急性アルコール中毒による死因で多いのは、アルコール濃度が高まることによって呼吸中枢、循環中枢が抑制されることによって死亡する事例です。中毒症状によって嘔吐した結果、それが気管に詰まり窒息する場合も多いようです。

また、アルコールを普段から常用している人については、これよりはるかに高い数値でも症状を示さない場合があるようです。

作用機序

エタノールの作用機序
中枢神経の興奮を抑えることで作用している

と言われていますが、現在解明されていません。
そのため、まず作用対象に挙げられているものを紹介します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/21/1/21_39/_pdf/-char/jaより一部抜粋

この作用対象としては、現在相当数の受容体が感受性があるとされています。分量が多い上に難易度も非常に高いので、詳しくはリンク先を確認してみてください。

普段は作用機序についてもう少し細かく解説するわけですが、今回はそれが難しいため、
長くなりすぎたので、次記事でアルコールの体内動態についていろいろお話ししたいと思います。

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