放射線解説1

解説

今回は放射線について解説していきたいと思います。

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放射線と放射能

放射線は高いエネルギーを持つ不安定な原子が崩壊し、他の安定した原子に改変したときに発生するものです。原子核が作り替わるときに原子の持つ余計なエネルギーが「放射線」となって放出されます。放射能とは「放射線」を発する能力のことで、その能力を持つ物質のことを「放射性物質」と言います。

放射線の種類と透過力

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-01-03-02.htmlより引用

放射線にはさまざまな種類が存在しています。
大きく分けて、粒子を持つ「粒子線」、それを持たない「電磁波」に分けることが出来ます。

https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/houshasen/index.htmlより引用

α戦、β線、γ線、X線という名称は発見された当時、その実態が分からなかったためつけられた名称です。ここから、それぞれについて簡単に解説します。

α線は陽子2個と中性子2個からなるヘリウム原子が高速で飛び出したものです。空気中では10cm程度飛びます。そして、体に接触するとそこから数µm~数十µm程度に影響します。

β線・中性子線は原子核から出てきた電子または中性子です。空気中では数メートルくらい飛びます。接触するとそこから数mm程度に影響します。

γ線とX線は目に見えない電磁波で、生まれる過程が違いますが、実態としてはどちらも同じです。持っているエネルギーにもよりますが、数十m程度飛び、接触すると数cm程度に影響すると言われています。

放射線・放射能に関する単位

Bq(ベクレル)
1秒間に改変する原子核数のことです。原子が崩壊すればするほどそれだけ放射線が発生するため、これが高ければ高いほど放射線量が多いことになります。
Gy(グレイ)吸収線量
物体が単位質量当たりに放射線から受けるエネルギー量を示す単位のことです。
物体へどの程度放射線エネルギーを与えたのかを示す指標です。
Sv(シーベルト)等価線量・実効線量
吸収した放射線が人体にどの程度影響するのかを示したものです。

Svについては二種類存在するので、それぞれについて簡単に解説します。

等価線量とは、吸収線量に放射線の種類による人体への影響の違いを加えて評価したもので、

等価線量=吸収線量(Gy)×放射線荷重係数

によって計算することが出来ます。
そして、放射線荷重係数は放射線の種類によって異なっています。

X線、γ線、β線 1
中性子線はエネルギーに応じて 5~20
α線 20

実効線量とは、等価線量に組織別に定められた組織荷重係数を検討し、そのすべてを足し合わせることで放射線によって組織にどの程度影響したのかを示す指標です。

ややこしい違いはありますが、Svはどちらも人体への影響を示すものです。

放射線の人体への影響

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-03-02-01.htmlより引用

放射線は「電離作用」と呼ばれる能力を持っていて、これが人体に影響を与えます。電離作用とは、放射線の持つエネルギーを物質の持つ電子に与えることで、電子を弾き飛ばす作用です。

https://www.specialist-doctor.com/contents/lung-cancer/treatment/radiotherapy/より引用

放射線が人体にあたると、それの持つエネルギーによって電子がエネルギーを獲得し、これが最終的にDNAの切断やDNAを構成する塩基の脱落を引き起こす等DNAに障害を引き起こすため問題になります。放射線の量が多ければ多いほど、切断が引き起こされる部位が増えるため、その影響が大きくなります。

細胞にはその損傷を修復する手段が備わっていますが、すべて修復が出来るというわけではありません。DNAがダメージを受けていると、細胞分裂を上手く行うことが出来ず、その最中に細胞が死んでしまいます。このため、放射線を受けてから遅れて症状が発現することがあるわけです。

しかし、もしも細胞分裂が中止されずDNAに損傷があるまま進行してしまうと、異常なDNAを持つ細胞が増殖してしまいます。そのため、放射線によってがんや遺伝的な影響が発生する原因となります。

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