前回記事でイベルメクチンの功績と新型コロナウイルスに関する情報についてはまとめたので、よければそちらもご覧ください。
今回の動画版はこちら↓
SNS上で見られる主張
数多くの臨床研究で、
「イベルメクチンは新型コロナウイルスに有効である可能性は低い」
という結果が出ているにも関わらず、SNS上では、
イベルメクチンは「万能薬」である
イベルメクチンは、本当は有効であるにもかかわらず、ワクチンや新薬を売るために無効とされている
毒ワクチンの解毒に有効である
という主張がいまだに見られます。このような陰謀論的な主張を様々見ていると、その主張をしている人の属性に共通点があるような気がしたので、簡単にまとめてみました。私が見る限り、
現在の医療に対する不信感を持っている
新しい技術に対する忌避感
「権威ある・信頼している者」がそう発信しているから、それを信じる
ワクチンの接種が強制であるとして、それに反発
といった背景のある人がそのような主張している傾向が強い気がします。
価値観の相違?
私もシェディングの動画を出した時に、一度反ワクチンの方からコメントがあり、話をしたことがありますが、「明らかに思考ロジックが違う」と感じました。
私は、「主張をするならその根拠を示してください」と何度も問いかけましたが、提示された情報の中に、「科学的根拠」と扱えるものは何一つありませんでした。情報を集めたホームページを運営されている方なので、そのような情報を積極的に収集されているはずにもかかわらず、です。
本来、科学的根拠というものは誰が見てもそうと判断できるものであるはずなので、このような相違は起こらないと思っていました。おそらく、私と相手の「科学的根拠」に対する認識が明らかに異なっていたのではないかと思います。とある研究の結果の解釈が異なる場合はあるとは思いますが、「そもそも根拠として認識するものが異なることがある」なんて考えたこともありませんでした。いい経験になったとは思いますが、おそらくこちらの主張を理解してもらうことは困難、もしくは不可能であると思います。
エビデンスに基づいた治療(EBM)とは?
上記のような経験があるので、
まずはエビデンスに基づいた治療(EBM)について簡単にお話しします。
治療は「患者に対してそれを行うリスクよりメリットが大きいと判断されたため行われるもの」です。「リスクをメリットが上回る」と考えられる根拠となるのがエビデンス、いわゆる科学的根拠です。治療はこれに基づいて行われています。
そして、科学的根拠は研究論文という形で存在しています。
しかし、この世に完璧な研究は存在せず、どのような研究にも「偏り」のようなものが存在します。
例えば、選挙に行く人の平均年齢が日本の平均年齢かといわれると当然違います。選挙権を持たない若い人は日本に大勢いるからです。どんな素晴らしい研究にもそのような偏りが必ず存在します。そのため、一つの研究から得られた結果を「真の値」として「全体に適応する」ことは適当ではありません。
ちなみに真の値とは、そのものの本当の姿です。
抽象的でわかりにくいかと思いますが、ざっくり「AをしたらBになる」という感じのものです。
具体的に、「薬Aを使ったら病気が治った」が本当にそうなのか確認するために臨床研究を行ったと想定してお話しします。
研究では、「Aをした群」と「Aをしなかった群」を比較して、その結果の差異からAをすることの価値を判定します。しかし、人間に全く同じ人がいないように、Aをした群としなかった群が全く同じとは限りません。そのため、純粋にAをした、しなかった以外の要因が必ず絡んできます。したがって、研究では「真の値」を求めることは困難ですが、多数の研究を総合して、客観的に「真の値」を推定することは出来ます。様々な研究から推定した真の値が統計的に有意な結果(またはそれに近いもの)を示せば、それがAを使うことのエビデンスとなるわけです。
これを踏まえて、先ほど紹介したような陰謀論に対する私の考えを示します。
「公的機関や専門家の言うことはウソだ」
この根底には何があるのかはよくわかりませんでした。おそらく、専門家や公的機関に対する信頼が著しく低いため、それに対する主張に肩入れしているなどそういった理由があるのではないかと思います。はっきりはわかりませんが、公的機関、もしくは専門家に反する主張を行っている人がはっきりものをいうのに対して、専門家はそのように言いません。この違いも影響しているのかもと思ったので、それについて解説します。
前提として、真の値は推定するしかない以上、断言は非常に難しい、もしくは不可能です。この断定しにくさというのが、「専門家は断言しなくてあいまい」というような印象に繋がるのかもしれません。かといって、断言は不適当なので出来ませんが…。断言している方がぱっと見いい感じに見えてしまうのですかね。ただ、断言をしていないだけで、「客観的にそうでない可能性が非常に低い」を根拠に思考しているため、現時点で真の値に近いのは間違いありません。
そして、主要な機関が判断した内容というのは、「それなりのレベルの、それなりの数の人間がそれを客観的に妥当だ」と判断したということです。専門家が公的機関から出る情報を信用しているのはそのためです。少なくとも私はそうです。そして、基本的にはそのような情報を念頭に現在の治療は行われています。
そのため、現在行われていること(現在の医療)が間違いであると主張するのであれば、
「現在の医療(研究から得られた情報から推定した真の値)」を誤りである
とする根拠を示さなければなりません。現在の医療はエビデンスがあってそれを行っているため、それを否定するためには「それなりの根拠」を示さなければ対等にはなりません。
もしも、陰謀論者が語ることが妥当であると証明できるのであれば、今までの医療よりもより良いものとして、その治療がスタンダードになるでしょう。しかし、それも出来ていない状態で現在の医療を否定する情報を流すことは「有害である」と判断されます。「何の根拠もないのに適当なことを言うな」という扱いを受けるだけです。当然っちゃ当然です。そのため、まずはその妥当性を客観的に証明することが必要です。
一部、「私たちの主張が受け入れられなかったことが陰謀だ、利権だ」という人もいるが、あなた以外の大多数の方はそう判断しなかっただけです。不当な理由があって受け入れられなかったのではなくて、単に証明に失敗しているだけです。
信頼する先生がそう主張しているから
その道の権威であってもエビデンスレベルとしては最も低いものです。お金をもらった、気分が変わった、ということでも言うことが変わる場合があるためです。その先生が自身の考えをしっかり研究に示して、それが数多くの専門家の批判に耐えられるのであれば、それもまた真の値に近いものと認識されるのではないかと思います。今のところ、その主張が受け入れられてない理由は根拠薄弱だからです。少なくとも、「権威がそう言っているだけ」では何の証拠にもなりません。またこれと同じように、SNS上でそのような意見を持つ人が多くいるということも何の証拠にもなりません。
Twitterでは時々、イベルメクチンをこっそり飲ませようとしたり、現在の標準医療を否定し、イベルメクチンを服用すれば何とかなるなどという主張が見られたりしますが、もう少し異物を体内に入れるということに慎重さを持ってもらいたいところです。
今回は以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました。
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