糖尿病解説

解説

今回は糖尿病について解説していきます。

糖尿病とは?

糖尿病は「血糖値が高い状態が続く代謝性疾患」のことです。実は、国が重要疾患の一つとして指定しているほど重要な疾患で、様々な重大な病気のリスクを高めるということが分かっています。

ちなみに、糖尿病患者の死亡時年齢はそうでない人の年齢と比較すると10歳程度低いと言われています。かなり大きな影響を与えるということが分かります。自覚症状が特にないので放置されがちですが、糖尿病は少しずつ、少しずつ体にダメージを与えていくため非常にまずい状態です。

糖尿病の疫学

https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/04.htmlより引用

有病者と予備軍を合わせると約2000万人いると言われており、近年増加傾向にあります。
そして、年齢が上昇すると有病率が高くなる傾向にあります。

https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/04.htmlより引用

その中でも働き盛りの方は治療を受けていない割合が高く、特に、40代男性では半数近くが血糖値が高いことを知っていながら放置している状態と言われています。詳しくは合併症のパートで解説しますが、未治療で放置しているのは非常にまずい状態なので、早く病院を受診して治療を受けることをお勧めします。心当たりのある方は、まずは健康診断に行くことをお勧めします。

血糖値について

血糖値はグルコースの濃度のことです。通常は狭い範囲に収まるように厳重に調整されているため、大きく外れた値は取らないようになっています。血糖値はグルコースを取り込んで血糖値を下げる「インスリン」など、多くの要素が複雑に動いて適正な値を保っています。

糖尿病は何らかの理由で血糖値が異常な高値を取る病気です。

食後は糖がたくさん吸収されてくるため、細胞内に糖を取り込んで血糖値を下げる細胞の活動のエネルギーとして使用されたり、余った分は脂肪として蓄えられたりしています。そのため、たくさん糖を取ると太ります。飢餓状態であるならば、蓄えた分を分解し、それで血糖値が下がりすぎないように体が勝手に調整しています。

健康診断でよく出てくる数値としては、「HbA1c」と「空腹時血糖」があります。
HbA1cはヘモグロビンが糖化したもので、およそ1~2か月間の平均血糖値が反映されています。そのため、健康診断の前にちょっと健康的な生活を送った程度では数値には反映されません。なので、どうせやるなら2か月程度継続して行うことが必要になります。正常値は4.6~6.2%です。
空腹時血糖は採血のタイミングでの血糖値です。正常値は80~90mg/dL程度と言われています。

糖尿病の区分

糖尿病には大きく分けて1型2型が存在しています。

1型糖尿病インスリンの分泌がされない状態です。原因としてはインスリンの分泌を行う細胞がダメになってしまうために発生します。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであるため、細胞に糖を取り込めない状態にあります。糖を細胞内に取り込めないと生命維持に支障をきたしてしまうため、インスリンの注射が必要になります。また、糖尿病のイメージである肥満とは関係なく発生するタイプで、糖尿病全体の5%程度と言われています。

2型糖尿病インスリンの作用が弱くなることで起こると言われています。生活習慣病のイメージで出てくる糖尿病はこちらです。糖尿病全体の95%がこちらに当てはまると言われていて、肥満の方が多い傾向にあります。

糖尿病の何が問題なの?

糖尿病に伴う異常な超高血糖は、それはそれでまずいのですが、今回は合併症についてお話しします。

超高血糖状態の解説は別の記事で行っているので、そちらを参考にしてください。

高血糖状態が続くと、血管にダメージが蓄積するため、それによってさまざまな合併症が発生します。

全身の血管にダメージを与えるため、かなり多くの合併症が存在します。すべて取り上げるのは難しいため、ポイントだけ解説します。

細小血管症
網膜症
最悪失明します。失明原因の第二位です。

腎症
透析導入原因の第一位です。透析導入になると、週三回くらい半日ほど拘束されることになり、厳しい食事と水分制限が課されます。

神経障害
痛みや温度を感じにくくなったり、しびれ感が出たり痛みが出る場合もあります。また、傷が出来たことにも気づかないこともあり、発見が遅れた場合、最悪切断の可能性があります。自律神経に影響が出る場合もあり、心臓や腸などの機能が低下します。
大血管症

脳梗塞
糖尿病は危険因子です。リスクは2~4倍と言われています。気づかぬうちに欠陥が詰まっている場合もあり、いつの間にか脳細胞が死んでしまっていることも起こります。それによる認知症が発生する可能性もあります。

心臓疾患
動脈硬化が進行するため、心臓の筋肉に血液が行き渡りにくくなった結果、心筋が最悪死んでしまう場合もあります。心筋は再生することはないため、心臓の機能低下につながります。欧米では糖尿病患者の5割程度が心筋梗塞で亡くなっていることからも糖尿病によって大きくリスクが上昇するということが分かります。

末梢動脈疾患
しびれ感、疼痛などが発生します。間欠性跛行という状態になると、歩くとふくらはぎなどに痛みや疲労感、しびれが発生し、休憩すると収まるような症状が出ます。つまり、歩き続けることが困難となります。

まとめると、糖尿病は「全身の血管にダメージを与えて、将来的な生活の質QOLを落とす疾患」と言えます。そのため、これらの合併症の発生を抑えて、QOLを維持できるようにすることが治療の目的となります。

どうして糖尿病になるの?

ここまで解説してきた通り、糖尿病の原因は血糖値が高い状態が続くことで起こっています。血糖値が上がる原因はいくつかありますが、代表的なものを取り上げて解説します。

外から入ってくる糖が多すぎる
入ってくる量が多いのであれば当然血糖値は上昇します。食べ過ぎ、飲みすぎなど、生活習慣の比重が大きいです。
対策としては、腹八分目を意識し、ゆっくり噛んで食べること。満腹感を得やすい、食事がゆっくりになりドカ食いをしないなどのメリットがあります。食べる量が減るため、入ってくる糖の量も減り、血糖値の上昇量が少なくなります。また、アルコールは飲みすぎないように注意が必要です。飲み物は多く糖類が入っていることがあるのでこれにも注意を払う必要があります。これといって食べてはいけないものは存在しませんが、食べ過ぎてはいけません。
血糖値を下げる能力が低い
この原因はインスリンの効きが悪いことにあり、その根本には遺伝的・体質的な問題が挙げられます。
遺伝的なものについてはどうにもなりませんが、特定の遺伝子だけが原因で糖尿病になるというわけではなく、遺伝子と生活習慣の両方が関係していると言われています。特に同居家族では生活は似やすいため、糖尿病になりやすい生活を送っている場合、家族内では糖尿病が出やすい傾向にあります。そして、「肥満はインスリンの効きが悪くなる」ということが分かっているため、肥満の解消は効果的です。肥満は個人の努力で何とかなる範囲なので、取り組む価値が大きいです。

対策としては、運動を行う事です。運動でインスリンの効きがよくなるため、血糖値を下げやすくなります。また、運動によってインスリンに関係なく糖が取り込まれるので血糖値を下げる効果があります。

運動は継続することが最も大切であるため、お勧めは楽しく負担を感じないことをすることです。効果の面でお勧めするなら水中歩行ですが、準備が面倒など誰でも取り組めるというわけでもないのが欠点です。簡単に取り組める食後の散歩もいい感じです。食後1時間が血糖も上がってくるため効果的です。個人的にはRFAを推しています。

ただし、運動では消費カロリーは大したことはありません。あくまでもインスリンの機能改善が目的に行うものです。そのため、先ほど紹介したような食事療法と組み合わせることが重要となります。

運動療法は病状によっては運動が制限される場合もあるため、気になる方は主治医に相談してから始めてください。
使用している薬の影響
代表的なものとしては、副腎皮質ステロイドや一部の抗精神病薬が挙げられます。ただこれはやめればよいというものではないので、主治医に相談する必要があります。

まとめ

糖尿病は近年増加傾向の重要度の高い疾患です。血糖値が高い状態が続くことで、多くの合併症を引き起こします。初期は自覚症状がないため放置されがちですが、進行してからでは取り返しのつかない場合も多いため、早期からの治療が大事になります。基本的には血糖値が高い状態が続かないようにすることが大事で、基本は食事です。よく噛んでゆっくり食べて、バランスの良い食事を、暴飲暴食は避けて。運動もするとなおよしといった感じです。

何より早期からの取り組みが最も大切なので、まずは健康診断を受けてみてはいかがでしょうか?ちょっとだけでも気を付けることで将来大きく変わります。

それでは今回は以上です、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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