市販薬をODするとどうなる?3/3

解説

前回、前々回の記事はこちら↓

動画版はこちら↓

単体のODについてはかなり情報が少ないので、添付文書や症例報告に記載されている情報を元に記載のある副作用を取り上げたという形になります。

ブロン錠のODで何が起こるのか?

https://www.ssp.co.jp/uploads/product/all/brt/package_insert.pdf?2より引用

ブロン錠のODによって起こる症状は
幻聴、被害妄想、強い不安感、倦怠感等が報告されています。

おおよそ、それぞれの物質をODしたときに考えられる症状とほとんど変わりありません。

しかし、ここで同時に四種類の薬剤を服用することになるため、
それらによる相互作用による変化が現れてきます。

今回問題になるのは、
「ジヒドロコデイン」「クロルフェニラミン」での相互作用です。

単体であればジヒドロコデインに弱い依存性が見られ、臨床上問題にはならないとされています。しかし、クロルフェニラミンはその依存性を増強するということが示唆されています。

脳内報酬系と依存性

脳内報酬系とは、「活性化することで、生体に快感を与える仕組み」のことです。これは生命維持や種の保存のためなど、生体にとってなくてはならない機構です。しかし、これは依存性にも関与していると考えられています。

以下の図は、脳内報酬系のうち中心的役割を担っているとされている、腹側被蓋野から側坐核に向けて情報を伝達する神経系を示したものです。

まずは簡単に図の見方について解説します。
図は、右の腹側被蓋野に存在する神経から側坐核に存在する右の神経へ信号が伝達されるようになっています。神経伝達は複数の細胞が協調して行われており、信号は神経細胞を銅線のように伝って伝達されます。しかし、この方法では神経細胞の間に存在する神経間隙を超えることが出来ません。そのため、神経間隙では「神経伝達物質」と呼ばれる物質が利用されます。神経伝達物質は神経の末端から放出され、その先の神経細胞の表面に存在する「受容体」で受け取られ、その先に信号を伝達していきます。また、神経伝達物質は神経間隙に放出されたのち、速やかに分解または再取り込みがなされ、必要以上に作用しないようになっています。

今回表示している神経系では、右のGABA作動性神経は中央のドパミン作動性神経の作用を抑制する働きを持っており、これによって脳内報酬系が過剰に活性化しないように調整されています。

ジヒドロコデインと脳内報酬系

ジヒドロコデインはGABA作動性神経に存在するオピオイドμ受容体へ作用します。この受容体が作動すると、GABA作動性神経の作用が抑えられ、GABAの放出量が減少します。その結果、ドパミン作動性神経に対する抑制作用が弱まり、ドパミン作動性神経の作用が強く出ることになります。その結果、精神的な依存性が発生すると考えられています。

ジヒドロコデイン+クロルフェニラミンと脳内報酬系

ジヒドロコデインとクロルフェニラミンを併用するとこのように変化します。
ジヒドロコデインはGABA作動性神経の作用を抑制しますが、クロルフェニラミンはドパミンの再取り込みを阻害します。このため、二つの面からドパミンの作用が強化されてしまいます。
これにより、単体よりも強く脳内報酬系が働くようになります。

よって、依存性が発現しやすくなるため市販薬のODは推奨しません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました