どうも、kmです。今回はカフェインについて解説をしていきます。
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カフェインとは?
カフェインは茶葉やコーヒー豆などに含まれるアルカロイドです。
嗜好品や薬を中心に様々なものに含まれているため、かなり身近な物質です。
カフェインは1819年にドイツのフリードリープ・フェルディナント・ルンゲ
によってコーヒーから世界で初めて単離された物質です。
名前の由来としてはコーヒー由来の物質であったため
ドイツ語でコーヒーを意味する「Kaffee」から取られたと言われています。
カフェインの代表的な作用としては、
眠気の解消や疲労感の軽減といった作用があります。
カフェインの適正な摂取量
カフェインは個人によって耐性がかなり異なるために、
ADI(一日摂取許容量)は設定されていませんが、
海外の機関による基準をまとめると以下のようになります。
健康な成人は一日当たり400mgまでの使用であれば問題ないとされていますが、
感受性には差があるため、感受性が高い人については
それより少ない量の摂取でも症状が発生する場合があります。
食品のカフェイン含有量
一般的な飲料に含まれているカフェインの量は上記のようになっています。
通常の摂取量であれば中毒を起こすということはないようですが、
製品によってかなり含有量が異なるということが分かります。
組み合わせによっては簡単に過量摂取に
なってしまう場合があるため注意が必要です。
カフェインの中毒事例
基本的にカフェインの中毒事例は自殺目的に大量の市販薬を
服用することによって起こっており、
コーヒーや紅茶などによって起きた事例の報告はないようです。
しかし、カフェインが比較的多く含まれるエナジードリンクに
ついてはアメリカで大量摂取による死亡例があります。
カフェインの作用機序
カフェインの作用機序はかなり多く、
「カテコールアミンの合成・遊離の促進」
「ドパミン受容体の刺激」「アデノシン受容体の競合阻害」
など様々あるようですが、今回は
「アデノシン受容体を競合的に阻害する」
について解説しようと思います。
アデノシン受容体とは?
アデノシン受容体は、ストレス刺激などで細胞から放出されたアデノシンが特異的に結合して刺激する細胞膜受容体で、心筋、平滑筋、脳、血小板、腎臓、白血球などに広く存在している。その生理作用は組織により異なっており、アデノシン類似体に対する選択性の違いから、A1~A3に分けられる。https://med.toaeiyo.co.jp/contents/cardio-terms/pathophysiology/2-47.htmlより引用
アデノシン受容体は全身に広く存在しており、
複数のサブタイプ(A1, A2A, A2B, A3)が確認されています。
このうち、カフェインは中枢神経系に多く存在する
A1,A2A受容体に対して作用します。
アデノシン受容体のイメージとしてはおおよそ以下のようになります。
アデノシン受容体は神経伝達における神経伝達物質の受容体として働いています。
神経伝達は電気信号として行われているわけですが、
この状態では神経間の隙間である神経間隙を超えられないため、
伝達方法を変える必要があります。
この時に使用される物質が神経伝達物質で、アデノシンはその一つです。
そして、細かい部分にはなりますが、
アデノシンはそのままシナプス前膜から放出されるわけではなく、
アデノシン三リン酸(ATP)の状態で放出され、
それが脱リン酸化されることでアデノシンになり
受容体に作用するという形になっています。
カフェインはアデノシンと競合的に作用するために、
受容体に作用するアデノシンの量を減らすことになります。
そのため、カフェインが作用するとアデノシンが
関与する神経伝達を弱めることになります。
競合的阻害とは?
競合的阻害は椅子取りゲームに例えられます。
受容体が椅子、神経伝達物質であるアデノシンと
カフェインが人だと思っていただければ大丈夫です。
まず左ですが、カフェインとアデノシン受容体だけが存在する場合です。
この時4つの受容体はアデノシンのみが結合し、
この時の信号強度を100%とします。
右の図はカフェインとアデノシンが半々で存在する場合です。
この時アデノシン受容体と結合するのは半分がアデノシンと
もう半分がカフェインになります。
カフェインは受容体に結合しても信号を発生させないため、
この時の信号強度は50%になります。
このような作用の阻害様式を「競合阻害」と言います。
アデノシン受容体の作用
実はアデノシン受容体はサブタイプによって作用が異なります。
よって、それぞれについてお話していきます。
アデノシンA1受容体
アデノシンA1受容体は全身の様々な組織に発現しており、
神経伝達に対して抑制的に制御しています。
カフェインがアデノシンA1受容体に作用すると、
普段アデノシンA1受容体が脳における興奮性のシナプスに対して
抑制的に作用しているため、この抑制が弱まってしまいます。
その結果、各組織でアデノシンによって抑制されていた
作用の抑制が外れてしまいます。
その結果、心拍数の増加や動悸、てんかん症状が現れる場合があります。
アデノシンA2A受容体
アデノシンA2A受容体はA1受容体同様全身の様々な組織に発現しています。
脳内では大脳基底核に多く存在しており、
運動機能の調整に関わっていると言われています。
作用はA1受容体とは逆で、興奮性の神経伝達を行います。
ただ、この興奮性の刺激は他の神経に対して抑制的に作用しているもの
に対しての興奮性の伝達なので、
最終的に表れる症状は、抑制が外れることによって現れる
通常の機能が亢進した症状になります。
抑制が外れた結果、血圧上昇や、体温上昇などが発現するようです。
睡眠に関して作用をしているのもこの受容体で、
アデノシンが脳内に蓄積したアデノシンA2A受容体に作用することで、
睡眠を誘発しています。
カフェインはアデノシンA2A受容体に対して競合的に阻害するので、
結果として眠気が軽減されるという作用がもたらされます。
カフェインの中毒症状
先ほど紹介した通り、カフェインの標的であるアデノシン受容体は
全身の様々なところに発現しています。
そのため、中毒症状も広範なものになります。
中毒症状として、食欲不振、吐き気、頻脈などがあり、
重篤なものだと痙攣、不整脈なども発生するようです。
カフェインの感受性の個人差が大きいのはなぜ?
カフェインの代謝は90%は肝臓に存在する代謝酵素である
CYP1A2という酵素によって代謝されています。
よって、この酵素のカフェインの処理速度によって
大方個人の耐性が決まってきます。
CYP1A2の遺伝子には3種類存在していますが、
そのうち1種類はアジア人には存在しないため、もう2種類について解説します。
CYP1A2の遺伝子多型
遺伝子多型とは、個人の持つ遺伝子配列の個体差のことです。
この図はCYP1A2の2種類の遺伝子を模したものです。
ものすごく久しぶりにこういう図を作ったので間違っていたら訂正お願いします。
CYP1A2の遺伝子は人によって1塩基だけ異なる(AかC)場合があり、
この変異によって酵素のカフェイン代謝速度が異なる
ということが分かっています。
Cの遺伝子はよりAカフェインの代謝速度が遅く、
代謝が遅いがゆえに体に蓄積しやすくなるため
カフェインへの耐性が低くなります。
もしカフェインが苦手な方は、C/Cの遺伝子をお持ちなのかもしれません。
それでは今回の解説は以上になります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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