高血圧治療薬「ニフェジピン(カルシウム拮抗薬)」

解説

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本記事は情報提供のみを目的としており、医療上のアドバイスや診断を行うものではありません。

ニフェジピンとは?

ニフェジピンは、1976年に日本で販売が開始されたジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の一つで、高血圧や狭心症を治療するために使われる薬です。カルシウム拮抗薬は、現在最もよく処方される降圧剤の一つです。もともとドイツで開発されたニフェジピンは、初めて広く臨床で降圧薬として使用され、日本で狭心症に対する効果が証明されました。

当初、ニフェジピンは強い冠動脈の弛緩作用のため狭心症に有効となるよう吸収の速いカプセル剤として開発されました。その後、ニフェジピンが降圧作用を持つことから安定した血中濃度を維持する徐放性を持った製剤が望まれるようになり、徐放剤が開発されました。現在は主に徐放剤が使用されています。

ニフェジピンの歴史

ニフェジピンはドイツ・バイエル社医薬中央研究所のBossert、Vater両博士によって、強力な血管拡張物質として1966年に発見されました。その後、詳しい事情ははっきりしませんでしたが、バイエル社は日本人研究者に研究の協力を要請しました。

それから、東北大学医学部薬理学教室の橋本虎六教授のグループは、ニフェジピンに 「強力な冠血管拡張作用」があることを1968年に発見し、1969年には日本医科大学の木村栄一教授がニフェジピンには「冠攣縮を抑制する作用があること」を発表します。1972年には、金沢大学医学部第二内科村上元孝教授がニフェジピンの降圧効果を世界に先駆けて発表します。1976年には狭心症治療薬として日本で承認され、その後降圧薬としても使用されるようになりました。

当初ニフェジピンはカプセル剤で、1日3回飲む製剤として販売されました。強力かつ急激に血圧を下げる作用があるため重宝されていましたが、ニフェジピンの強力な作用によって急激な血圧低下が発生し臓器に血液が十分行き届かなくなってしまうことや、急激な血圧変動が病気を悪化させてしまう可能性が問題視されるようになりました。

バイエル社はこれらの問題を解決するために、緩やかにニフェジピンを放出するように設計した「アダラートL錠」を開発しました。この工夫によって、急激に血中濃度が変動することで発生する急激な血圧変動を抑えることが出来るようになりました。そして、長く効き目を保たせることが出来たため、1日に2回の服用で済む製剤となりました。その後、1日1回の投与でさらに安定した薬効が得られる「アダラートCR錠」が開発されました。

この錠剤は錠剤の中に核となる錠剤が存在していて、それらが体内で徐々に溶けることで効果を発揮しています。水分の多い胃から小腸にかけて外層部のニフェジピンがゆっくり溶出し、その後、水分の少ない消化管下部に達すると、内核錠のニフェジピンがすみやかに溶出するという仕組みにより、1日1回の内服で安定した薬効を発揮するようになりました。

そのため、このような錠剤を噛んで服用するとこのような構造が破壊されてしまうため、急激に効果が表れてしまうようになります。

ニフェジピンの作用機序

非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(ベラパミルやジルチアゼム)と比較すると、ジヒドロピリジン系のニフェジピンは血管選択性が高く、心収縮力や心拍数に対する抑制作用は弱い傾向にあります。よって、解説は血管内皮細胞に対するものを中心に行うこととします。

ニフェジピンは血管を拡張させることによって、狭心症の症状を抑えたり、血圧を低下させるといった効果を発揮します。

血管の容積と血圧

まずは「なぜ血管が収縮すると血圧が上昇するのか」を解説します。たとえ話として、大きい水風船と小さい水風船に水を入れる話をします。

まず、大きい水風船と小さい水風船があるとします。これらの風船に同じ量の水を入れるときのことを考えてみます。これらの風船に水を入れたとき、当然小さい方に大きな負荷がかかります。血圧もこれと似たようなものです。

風船の表面にかかる力を血圧、水を血液に置き換えてください。血液の量自体が変わらない場合、血管の容積によって表面にかかる力は大きくなります。すなわち、血管が縮むと血圧が上昇するというわけです。

Ca2+は私たちの体で重要な役割を果たしており、血管の収縮にも大きく関わっています。高血圧の人や狭心症の人では、血管が過剰に収縮することで血圧が上昇したり、心臓に栄養を運ぶ血流が悪くなることがあります。

今回表示している細胞は、血管の容積を調整している「血管平滑筋細胞」です。細胞内外のCa2+濃度が厳密に決められていて、それが維持されています。必要に応じてイオンの移動を行うことで細胞が持つ機能を発揮させることが出来ます。血管平滑筋細胞内はCa2+が流入すると、最終的に収縮します。

作用機序の解説

ニフェジピンは、血管平滑筋細胞の表面にCa2+チャネルに結合し、細胞内へのCa2+流入量を減少させる作用を持っています。これにより細胞内のCa2+濃度が低下し、血管の平滑筋が弛緩することで血管が広がります。血管が広がると血圧が下がり、心臓への血流が改善されます。ニフェジピンは他の種類のCa2+チャネルブロッカーと比べて血管に対して作用することが多く、心臓の収縮力や心拍数にはあまり影響を与えません。

このような機序でニフェジピンは血管を拡張させて血圧を低下させたり、血流を良くしたりすることが出来ます。その結果として高血圧や狭心症の症状を和らげることが出来ます。

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